鉄板のシーズニングで失敗しない為に
こんにちは!
アウトドアメーカー over north Web担当のこばです。
今回は『鉄板のシーズニングで失敗しない為に』と題しまして、改めて鉄板のシーズニングの手順を失敗しがちなポイントも抑えつつ解説していこうと思います。
鉄について
シーズニングの解説をはじめる前に、まずは素材である鉄について軽く触れておきたいと思います。
なぜならば一言で鉄と言いましても、様々な配合により無数の種類に枝分かれしており、どういった鉄を素材とした鉄板かでシーズニングやお手入れ方法が微妙に異なるからです。
とは言え、そこまで神経質になる必要はなく、あくまで大別した中での違いさえ理解していれば問題ありません。
その点はしっかり押さえておりますので、今回の記事をお読み頂ければ市販されている鉄板のお手入れ方法で戸惑うことはなくなるはずです。
まず鉄の種類ですが、先にも述べたように配合や製鉄方法等で無数に分かれます。
ただ、それらは強度や耐久性が人間の命や生活に直結する工業製品用素材としての話であり、鉄板のシーズニングをする上での知識としては必要ありませんので、ここでは大別した3種類のみご紹介させて頂きたいと思います。
・鋳鉄(ちゅうてつ)
鉄を主とする金属を溶かして鋳型(いがた)と呼ばれる専用の型に流し込み、冷ますことによってできる鉄で、鋳鉄を使った製品を鋳物(いもの)、その作業自体を鋳造(ちゅうぞう)と呼んだりします。
元々が金属を溶かして作られている為、比較的再利用が容易で安価且つサスティナブルであると言えなくもないですが、反面、脆いというデメリットがあります。
その為、穴あけやカット、曲げなどの二次加工には向かない金属と言えます。(その分、鋳型で様々な形を作ることが可能です)
また、表面が一切コーティングされていない(錆止め剤の塗布やシーズニングがされていない)状態ですと、非常に錆びやすいのも特徴の一つです。
その為、一般に流通している鋳鉄製品には大抵錆止め処理が施されています。
錆止め剤は人体に有害であるといわれている為、そのままでは使用できず、必ず最初に錆止め剤を焼き切る作業をしなければなりません。
錆止め剤を焼き切った後は、鋳鉄製品が錆に対して無防備になる為、油を全体に慣らしていくことになります。
皆さまもご存じの通り、この一連の工程をシーズニングと呼びます。
ダッチオーブンやスキレットの材料になることが多い素材です。
・黒皮鉄(くろかわてつ)
製鉄時、高温から常温に温度が下がっていく際に、鉄の表面に薄い酸化被膜と呼ばれるものができます(人間が手を加えている訳ではなく自然の現象です)。
これを黒皮と言い、通常はこの黒皮部分を研磨して取り除き、中の綺麗な銀色の部分を材料(いわゆる一般的な鉄)として使うことが多いのですが、この黒皮を敢えて残した鉄を黒皮鉄と呼びます。
最初から酸化被膜ができている状態なので、鋳鉄よりは圧倒的に錆びにくいのが特徴です。
ある意味でシーズニングされている状態と言えなくもないですが、自然にできるものの為、金たわしや研磨剤入りのスポンジなどの固いもので擦ると簡単に剥がれてしまいます。
黒皮鉄の場合、人によっては敢えてシーズニングや使用後の手入れ等をせず(洗浄後の水分は拭き取っていると思いますが)に経年劣化(変化)を楽しむという方もいますので、黒皮鉄の場合は、その人の好みによるところもあるかと思います。
黒皮は見栄えとすぐ剥がれてしまうという扱いがデリケートな観点から基本的に取り除かれることの方が多いので、黒皮鉄をそのまま使った製品はあまり見かけませんが、近年のアウトドアブーム時に各社から四角い鉄板がこれでもかと発売されたのを覚えている方も多いのではないでしょうか。
かく言うover northで扱っている鉄板(ステンレスは除く)も全て黒皮鉄になります。
・ステンレス
英語で書くとStainless Steel(汚れ(錆び)ない鉄)となっている通り、ステンレスも鉄の一種になります。
国際規格では、鉄に対してメッキ等で使われるクロムを10.5%以上含有、且つ炭素の含有割合が1.2%以下の合金を大きな括りでステンレスと呼んでいます。
ステンレスは配合する素材の種類や含有割合によって無数に分かれますが、ここでは気にする必要は一切ありません。
元々クロムが銀白色をしている関係で、ステンレスもシルバーのような色合いになっているようです。
そういった見た目から綺麗に見える一方で、一度汚れや焦げがこびり付いてしまうと目立ってしまうというデリケートな一面も併せ持っています。
クロムを含有していることでほぼ錆びない為(※)、シーズニングは必要ありませんし、洗う際に中性洗剤を使用することも可能です。
鉄よりも価格は高いですが、シーズニングや面倒なお手入れが必要ないという観点から、近年ステンレス鉄板の人気もじわじわと高まってきています。
※正確には、クロムと酸素が結びつき人間の目には見えないレベルの薄さで被膜が作られています。
チタンやアルミが錆びないのも酸素とそれぞれの原子が結びつき、目に見えないレベルの被膜を形成している為です。
鉄板のシーズニング方法
各素材の違いについてご理解頂いたところで、ここからは実際のシーズニング手順をご紹介していきたいと思います。
まず最初にお伝えしたいのは、一言でシーズニングと言っても、人によってやり方が分かれるのが実情であるということです。
とは言え、辿り着きたいゴール(目的)は皆同じかと思いますので、ここではシーズニングの一例をご紹介するという形にさせて頂きます。
分かりやすいように、目的ごとにカテゴリ化してお伝えしますね。
〇準備するもの
・シーズニングしたい鉄板(ダッチオーブン、スキレット含む)
・ガスコンロ(カセットコンロ)
・台所用中性洗剤
・キッチンスポンジ(固くなく研磨剤が入っていないもの、100均でOK)
・家にある炒めもの用油(オリーブオイルをお勧めしているところが多いですね)
・野菜屑(ネギの青い部分やキャベツの芯、ミカンを食べるご家庭であればミカンの皮でも大丈夫です)
〇シーズニング手順
目的1:錆止め用の油分(ワックス等)と汚れをある程度落とす
1.ダッチオーブンやスキレットなど、ある程度深さがある場合は水を入れて加熱し45℃前後になったら火を止める
⇒フラットタイプの鉄板など、深さがない場合はこの工程を飛ばしても問題ありません。
不安な場合はボールや桶などに45℃前後のお湯を張り鉄板を入れて約1分間放置します。
2.1の水を捨て、スポンジに中性洗剤を馴染ませて鉄板を洗う
⇒すすぎも丁寧に。鋳鉄の場合、洗剤を使うのはこの1回のみです。
フラットタイプの鉄板の場合は、この工程2からのスタートで問題ありません。
※注意
ダッチオーブンやスキレットの場合でも、時短したい時は工程1を飛ばすことも可能ですが、鋳鉄製品の場合は錆止め剤が厚く塗布されていることが多いので、念には念を入れて工程1から行うことをお勧めいたします。
目的2:錆止め剤を焼き切り洗い流す
1.洗った鉄板を火にかけ空焚きする
⇒煙が出てくるまで辛抱強く待ちます。
※注意
空焚きは強火にせず基本的には中火で行ってください。特に黒皮鉄板の場合は黒皮まで焼き切ってしまったり仕上がりにムラが出来てしまう可能性がありますし、鉄板が薄い場合は変形してしまうこともありますので特に火加減には気を付けて下さい。
錆止め剤を焼き切る工程になるので、窓を開ける、換気扇を付ける等、風通しのいい場所で作業を行ってください。
2.全体を満遍なく加熱し、煙が出なくなったら火を止めて鉄板を冷ます
⇒火を止めた後は手で掴める程度まで自然に冷ましてください。
高温の状態で水を掛けてしまうと激しい温度変化によって、鉄板が高確率で変形してしまいます。
3.鉄板が冷めたらスポンジで入念に水洗いする(中性洗剤は使わない)
⇒黒皮鉄板の場合は一部剥がれた黒皮が黒ずみとして出てくる場合があるので、スポンジに黒ずみが付かなくなるまで洗います。
もしくは、洗浄後にキッチンペーパーで黒ずみが消えるまで拭くことでも取り除くことができます。
目的3:鉄独特の匂いを消し、新たに油膜を張る
1.水洗いした鉄板を火にかけ、水分を飛ばす
⇒最初は強火でも構いませんが、水分が蒸発し始めたら中火に落とします。
2.鉄板に油を少量入れ野菜屑を炒める
⇒あくまで匂い取りなので、野菜は焦げても問題ありません。
3.火を止め、炒めた野菜屑を取り出したら、そのままの状態で鉄板を冷ます
⇒この段階で鉄本来の匂いはほぼ消えているはずです。
目的4:全体を綺麗にし使用する時まで仕舞っておく
1.鉄板が冷めたらキッチンペーパー等で野菜を炒めた油を拭き取りつつ、外側も含めて全体に軽く油を塗布する
⇒この際に焦げた野菜屑が残っていた場合はキッチンペーパーで取り除いてください。
※注意
黒皮鉄板の場合は、ここで最後の黒ずみ確認を行ってください。
あまりにも黒ずみが消えない場合は、中性洗剤を含んだ柔らかいスポンジで洗うのも手です。
その場合は、再度火にかけて水分を蒸発させ、全体に油を塗ってから下の手順に移行します。
2.新聞紙に包んで湿気の少ないところに仕舞う
⇒ダッチオーブンのように内部に空間がある製品の場合は、中にも新聞紙を丸めて入れた方がよろしいかと思います。
鉄板のシーズニングで失敗しない為の注意点
ここまで鉄板のシーズニング方法を中心にご説明してきましたが、最後にシーズニングや鉄板の保管時に失敗しない為の注意点を改めてお伝えできればと思います。
・強火にし過ぎない(一部分だけを加熱しすぎない)
⇒特に黒皮鉄板の場合はムラが出来たり、自然の酸化被膜である黒皮を焼き切ってしまう原因になります。
必要に応じてバーナーパッドを敷いた上でシーズニングするなど、対策を講じた方がよろしいかと思います。
バーナーパッドはメスティンで炊飯をするなら必須と言ってもいいアイテムです。
もし持っていない方は、この機会に手に入れておきましょう。最近では100均(330円)やディスカウントショップでも手に入りますよ。
・湿気の多い場所で保管しない
⇒当然と言えば当然ですが、あまり意識されていない方もいらっしゃいますので改めて挙げさせて頂きました。
たとえ新聞紙に包んでいたとしても湿気が多ければ錆が発生してしまうことはあるので、意識して湿気の少ない場所に保管するようにしましょう。
周りに湿気の発生源になりうるものを置かないことも重要ですね。
・黒皮鉄板の場合は敢えてシーズニングをしない人もいる
⇒黒皮鉄の紹介部分でも軽く触れましたが、これはどちらかと言えばご提案ということになるかもしれません。
先にもお伝えしましたが黒皮鉄は自然にできる酸化被膜になりますので、その時点で圧倒的に錆の発生確率は下がっています(※傷が付いた場合は中の鉄が露出しますので、そこから錆が発生する場合があります)。
その為、人によってはシーズニングはせず洗う時も毎回中性洗剤を使い、油を塗ることもしないという方もいらっしゃいます(洗浄後の水分は拭き取るか、火にかけ蒸発させます)。
・なるべく金たわしを使用しないようにする
⇒こびりついた汚れを簡単に落とせる金たわしは便利ですが、同時に鉄板へダメージも与えています。
その傷ついた部分に汚れが付着し、新たにこびりつきが発生する原因になったりしますので、シーズニングを行わないステンレス鉄板も含めて金たわしの使用にはご注意下さい。
特に黒皮鉄板ですと、黒皮が簡単に剥がれてしまいますのでお勧めできません。
もしこびり付きが発生してしまった場合は、ぬるま湯に漬けてふやかすか、深さがある場合は水を入れて火にかけるのも一つの手段です。
・ステンレス鉄板を使う場合は、いつまでも綺麗に保てないことを肝に銘じておく
⇒ステンレス鉄板は一度も使用していない状態だと見た目が綺麗なのですが、逆に一度でも使用すると少なからず汚れが焼き付いてしまい元の綺麗な状態には戻りません。
火力など、使い方次第でも変わりますが、見た目が綺麗だからという点でステンレス鉄板にしてしまうと後悔する可能性もありますのでご注意ください。
(スチールウールで磨けば元に戻る可能性もありますが、金たわしと同じく表面を削っているという点は理解しておいた方がいいですね)
ただ、鉄よりも熱伝導率が低いので、蓄熱性という観点ではステンレスに軍配が上がります。
ですので、蓄熱性を活かした調理をする場合は、ステンレスがおススメです!(分厚いステーキなど)
まとめ
ということで、今回は『鉄板のシーズニングで失敗しない為に』と題して、改めて鉄板のシーズニングの手順と注意点を挙げさせて頂きました。
文中でも言及しておりますが、達成したい目的は同じでもプロセスは人によって異なると思いますので、こういうやり方、考えもあるんだなという温かい目で見て頂けると助かります(笑)
最後に個人的な意見を述べさせて頂くと…
鋳鉄製品は油断するとすぐに錆びてしまうので手間のかかる分、育て上げた時(一般的に油膜が綺麗にでき黒光りしている状態)の感慨がひとしおですし、そこに至るまでのプロセス(日々の手入れ)も楽しみの一つだと言えます。
一方で、ステンレス鉄板はそういった手間がほとんどかからない為、昔に比べて可処分時間(日々の必要な事を終わらせた後に残る本当の自由時間)の少なくなっている現代人に合っているとは思うのですが、逆に育て上げる楽しみは味わえないですよね。
ちょうど、その間を取るような形で黒皮鉄板が位置している形ですので、鉄板の素材で迷っているのであれば黒皮鉄板から始めてみるのもよろしいかと思います!
関連情報
世の中にないものを提供する | over north(オーバーノース)
over north(オーバーノース)では、長年培ってきた金属加工の技術を活かして、世の中にないものを提供することを目指し、金属製アウトドア用品・家庭や飲食店での使用を想定したオシャレな金属皿を取り揃えております。グリルプレートや焚火台、メスティンの蓋のロックパン等の開発・製品化もしており、材質は鉄やステンレス、チタンなどさまざま。ソロキャンプにもおすすめです。
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